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Canon Autoboy S (SURE SHOT Z115)

携帯性:★★
操作性:★★★
機能性:★★★
描写力:★★★★
快適度:★★★★
 外観ボロボロのジャンク品を2003年11月に購入。性能に定評あるAutoboy S(スーパー)の北米地域向け輸出品の別名同型機。キヤノン全自動コンパクトカメラの最上位機種として開発されただけに、高品位な作りで、性能面でも定評がある。大柄なボディは高性能とのトレードオフか。

 (追記)2004年10月15日、職場の女性の誕生日プレゼントとして貰われてゆきました。今後はファミリーカメラとして活躍しておくれ。

携帯性:★★ − コンパクトではないコンパクトカメラ

 レンズの描写は一眼レフ並などと言われるこのカメラ、ボディの大きさまで一眼レフ並というのは困りものです。ボディの幅・厚みなんかPENTAX MEと同等か、むしろ大きいくらいです。いったい普段の携帯はどうすればいいんだろう?と頭を悩ませてしまいます。ポケットに入れる大きさじゃないし、バッグに入れるにも場所を取りすぎるし。この1台だけで撮影に出かける、という気構えが必要なくらいです。コンパクトではないコンパクトカメラ。そんなのあり?中身の良さには定評あるから、そこは我慢しましょうってことになるのかな。

操作性:★★★ − 回しやすいダイヤルと操作性最低のボタンが共存する摩訶不思議

 電源スイッチと撮影モード設定を兼ねたボディ背面の「ベストショットダイヤル」の操作性は良好です。通常のオートモードの他に、アクションモード、夜景モード、ポートレートモード、マクロモードの各撮影モードがあります。その他、動作音を抑えたサイレントモードとAFを中央1点で行うスポットモードもこのダイヤルで選択できます。個々のモードの必要性には疑問の残る部分もあり、操作性の良いダイヤルですがあまり必要のない機能が割り振られている印象が強いです。

 本来であれば、ストロボの設定がこのようなダイヤルで設定できるのが望ましいのですが、その肝心のストロボ設定はダイヤルの隣、フタの下にしまい込まれた小さなボタンに割り当てられています。しかもそのフタがご丁寧にもバネ蝶番なので、設定ボタンを押すためにはフタを抑えていなければいけないという、迷惑極まりない仕様になっています。そもそも北米使用のこのカメラでもボタンをこんな押しづらくしていたら、メリケン共には絶対操作できないんじゃないかと思うけどねえ。

 それにしても、撮影モードの設定がボタン、ストロボモードの設定がダイヤルになっていたらずっと使いやすくなっていたんですけどねえ・・・。実際にストロボ設定がスライドスイッチになったカメラをキヤノンは出しているだけに、こういう所がもったいないです。

 また、ズームの操作がボディ上面の2個のズームボタンで行うようになっていますが、正直なところこれも押しやすくはありません。キヤノンも後のカメラではシーソーレバーを採用しているところからも、どちらが操作性が高いかはキヤノン自身も理解できたようです。

 もう1点挙げると、電池室のロックがコインで回すネジタイプのもので開閉に手間がかかるのも不便です。このあたりは細かい操作のできないメリケン向けかと思いきや、Autoboy TELE6]でも同じ仕様なので、国内向けのAutoboy Sでも一緒なのかも。蓋が外れちゃうので、落としてなくしそうになるのがいちばん困ります。

機能性:★★★ − 機能は多いが普段使うものは少ない

 前述のベストショットダイヤルで設定可能な撮影モードは、全自動のAUTOモードに加えて、撮影シーンに応じた以下の4つのモードがあります。動きのあるものに連続してピントを合わせるサーボAFで秒1コマの連続撮影が可能なアクションモード。低速シャッターで夕暮れ・夜景を撮影可能な夜景モード。人物の上半身が入るように自動的に(勝手に、とも言う)ズーミングし、目にキャッチライトが入るように常にストロボが発光するポートレートモード。焦点距離90mm固定で通常よりも最短撮影距離が短くなって草花を大きく撮るのに向いたクローズアップモード。そしてカメラの動作に関わるモードとして、巻き上げ音の静粛化を図ったサイレント(S-AUTO)モード、ピント合わせを中央1点で行うスポットモードの2つがあります。

 撮影シーンに応じたモードについては僕は使いません。初心者にはアイコン表示のこれらの撮影モードが分かりやすく感じるかもしれませんが、カメラ側で勝手に色々とやらかしてくれるのでカメラと写真に知識のあるユーザーにとってはかえって使いづらいものです。ストロボやシャッターの動作を個別に設定できるだけで十分なんだけどなあ。僕はサイレントもしくはスポットモードで、ストロボを発光禁止にして使っています。

 ストロボモードは、フタの下の各種設定ボタンの中のボタンで操作し、赤目低減オート → オート(赤目低減OFF) → 強制発光 → 発光禁止 → スローシンクロ(赤目低減ON)と設定可能です。いきなり赤目低減がオンになるってのは少々邪魔くさいです。ひとつ特徴的なのは、赤め低減のための光源がストロボ光ではなく、ストロボ部に内蔵された専用ライトになっているのは面白いです。

 ストロボをオフにするためには、フタを開けて小さなボタンを3回も押さなきゃいけないのも面倒です。しかもストロボモードは電源オフはもとより、撮影モードダイヤルを回しただけでもリセットされてしまう不便さです。また、レディランプがないため撮影時にストロボが発光するのかしないのか、シャッターを押すまで分からないのも困ります。使うつもりもない場でストロボが発光すると、これほど迷惑なこともありません。したがって、スナップ撮影では通常は発光禁止に設定しておくのが無難です。調光精度は良いので、旅行などの記念写真ではオートのままで大丈夫でしょう。

 その他、「Happy Birthday」など5種類のキャプションを画面内に写し込める機能がついていますが、今となっては完全に時代遅れの機能ですし、発売時点でもこれを喜ぶユーザーがいたのかどうかは甚だ疑問です。このあたりの余計な機能の搭載にはバブルの残滓を感じます。

 なお、国内版のAutoboy Sには搭載されているパノラマ機構は省略されています。これは全く使わない機能なので、付いていない方がありがたいです。コンパクトカメラの海外モデルでは、日本国内向けには搭載されているパノラマ機構やオートデートが省略されたものが基本モデルで、これらの機能はオプションとして搭載されていることがよくあります。必要ない機能にお金を払わずに済むので、日本でも同じような販売をして欲しいです。でもよく見ると、液晶画面にはパノラマモードを示す「P」マークがあるんだよなあ(点灯はしないけど)。液晶まで別のものを用意するほどコストはかけていないってことか。カバーを開けたらパノラマスイッチがあるかもね。

描写力:★★★★ − ズームコンパクトとしては抜群の写り

 う〜む、こりゃあイイですねえ。良く写るわあ。巷に聞くこのカメラの写りの良さへの評価は伊達じゃありませんね。シャープで色のりも良く、一見して好印象を抱く写りです。解像力も高いようで、細部の描写もしっかりしています。立体感も出ているようでいい感じです。なんと言うか、光をうまく捉えることができるという印象です。撮影時の空気や光が伝わってくるような感じなんですよねえ。ズームレンズを搭載したコンパクトカメラとしては抜群の写りではないでしょうか。一眼レフ並という評価もうなずける写りですね。メインの1台として使えます。これはいいです。

 ただ、素晴らしく良く写ったカットがある一方で、ピントを外しているカットが散見されたのが気にかかります。使い方が悪かったのかなあ。もう少し試してみなきゃいけないかも。ボロボロでコンディションの良くないジャンク品だったから、不安定な部分があった可能性もありますね。500円だから文句は言えないなあ、というか、500円ならおつりが来て余りあるほどイイですわ。

快適度:★★★★ − 静粛性・抜群のレスポンスは素晴らしい

 キヤノン全自動コンパクトカメラの最高機種として開発されただけに、アルミ製の前カバーや各部の質感・動作感も良好です。巻き上げ音の低減を図ったサイレントオートモードを搭載するなど、静粛性にも気が配られており、非常に上質なカメラという印象を与えます。このあたりの作り込みの良さは素晴らしいです。サイレントモードを利用しなくても、動作音は僕の手元のコンパクトカメラでは一番静かです。

 また、特筆すべきはズーム動作のレスポンスで、これほど高速で反応の良いコンパクトカメラの電動ズームは初めてです。このスピードはさすがに電池を2個必要とするだけのものはあります(普通のカメラは同型電池1個で動作する)。またそのスピードに似合わず動作音も抑えられており、ズーム動作は抜群に素晴らしいです。

 難点を挙げると、少々ファインダーが覗きにくいです。ファインダーの位置がレンズよりもボディの右手側に寄ったボディ中央部にあるため、サッと構えたときにファインダーが目の前に来ないのです。個人的にはファインダー位置が右に寄りすぎています。僕の持っている他のカメラは、一眼レフ・コンパクトカメラともに全てファインダーはボディ中央よりも左に寄った位置に付いているので、このファインダーの位置には違和感を覚えます。なぜレンズと同軸上に配置しなかったんだろう?その方が視差も少なくて済むのに。ずらすなら左側にずらして欲しかったなあ。倍率もやや低めなのも残念です。もう少しファインダーの出来がよければ文句なくいいカメラだったのに。あと、ジャンク品だからかもしれないけど、ファインダーが少々フレアっぽくコントラストが低めなのも見づらいです。

 またもう1点、ボディ前面のデザイン上のアクセントにもなっているグリップが、高さが不足しているためにグリップとしての機能を果たしていないことがあります。ボディ前面がアルミ製であることもあって、少々滑りやすいです。

 いくつか不満もありますが、全体としては非常に高い質感とレスポンスで、メインの1台として十分に快適な撮影を楽しむことができるカメラです。大きさが気にならなければオススメです。

主な仕様

発売
1993年9月 希望小売価格65,000円
レンズ
38〜115mm/F3.6〜8.5 9群10枚
シャッター
4秒〜1/1200秒
合焦方式
3点測距アクティブ方式Ai-AF(中央1点測距可)
撮影範囲:0.6m〜∞(クローズアップモード撮影時0.4m〜∞)
露出制御
3分割測光によるプログラムAE、連動範囲:EV3〜21
フィルム感度使用域:ISO 25〜3200(DXコード)
露出補正:ストロボOFFモードで逆光時+1.5段の自動露出補正
ストロボ
内蔵固定式、ガイドナンバー14(ISO 100・m)、低輝度・逆光時自動発光
常時発光、発光禁止、スローシンクロモード、赤目低減発光
外観
130×70×60mm/320g(電池別)
その他
4カ国語による5つのキャプションの写し込み可
SURE SHOT Z115はAutoboy Sの北米仕様
キヤノンによる製品紹介のページはこちら
レビュー
背面スイッチの使いにくさ以外の点で、非常に優れたカメラ(camera-photo.hp.infoseek.co.jp)
描画に関しては一眼レフがいらないくらい綺麗(askair.hp.infoseek.co.jp)
確かに一眼レフなみの画質だが、やはり一眼レフの代わりになるわけではない(est.hi-ho.ne.jp)
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